PSAスクリーニングについて
検査にも治療にもリスクとベネフィットがあります。
主治医と相談しながら進めていきましょう。
健診でのPSA(前立腺がんの腫瘍マーカー)のスクリーニング検査の是非について結論は出ていません。
前立腺がんが疑われた場合の確定診断のための検査、前立腺生検が侵襲度が高いこと、
前立腺がんの手術を行った後にED(勃起不全)や排尿障害が起こる可能性があること、
前立腺がんは予後の良いがんで発症者も別の原因での死亡が多いこと、
からPSAスクリーニングに関しては議論されていました。
PSAのスクリーニングによる前立腺がんの死亡率への影響について調べたERSPCとPLCOという2つの大規模研究がありました。
今回はその2つの結果を統合したものが発表されました。
Reconciling the Effects of Screening on Prostate Cancer Mortality in the ERSPC and PLCO Trials
実は、2009年に発表された2つの研究、ERSPCとPLCOはPSAスクリーニングの役割を考える上で課題を作った研究でした。
ヨーロッパのERSPC研究ではPSAスクリーニングによって死亡リスクが20%低下したとする結果が得られたのですが、
アメリカのPLCO研究ではPSAスクリーニングに有益性はない、と相反する結果が得られていました。
そのため、健康な方・無症候の方のPSAを測定することは有意義なのか議論されていました。
今回の2つの大規模研究を統合したものの結果は注目されていました。
結果は、PSAスクリーニングによって前立腺がんによる死亡リスクを25~32%低減できるとのことでした。
PSAは血液検査で簡単に調べられます。
ただ高値だとしても単に加齢によるものや前立腺肥大症などの可能性もあり、前立腺生検を行うかの判断は難しいところがあります。
また生検結果が陰性であってもがんを取り逃した可能性も考えるととても対応が難しいです。
そいうった状況ですがNCCN 腫瘍学臨床診療ガイドラインから前立腺がんの早期発見のために提言が出ています。
PSAの繰り返しの測定、直腸診(肛門からの指の挿入による指診)、良性疾患の精査(エコーでの前立腺肥大症の診断など)から生検の判断、次回検査までの期間を決めることが記載されています。
重要なことは、”前立腺がんスクリーニングのリスクと利益について話し合いながら”進める、との点です。
必ずやるべき、やってはいけない、といったことは知識のある医師の診療を受けていれば問題ありません。
しかし医学では結論の出ていないこともたくさんあります。
相談しながら検査と治療を勧められる主治医を持つことが大切です。