急性虫垂炎の抗菌薬治療から5年間の成績
虫垂炎の治療は外科的治療(手術によるもの)と保存的治療(抗菌薬投与によるもの)があります。
それぞれの治療に一長一短ありますので主治医とよく相談することが大切です。
当院では1日1回で効果のある抗菌薬の点滴を使用して外来で治療することもあります。
虫垂炎は手術を行うこともある重篤な疾患です。
特に、発熱と腹痛や下痢などの症状のある場合には胃腸炎との区別が重要な疾患です。
(以前、胃腸炎と虫垂炎の見分けの方のコラムを書きました)
食あたりかな?とおっしゃって当院を受診して虫垂炎だったという方もいらっしゃいます。
基本的には入院して絶食と抗菌薬の点滴、状況や希望によって手術を行うこともあると説明しています。
ただ、実際お腹は誰しも切りたくはないものです。
よく、虫垂炎を散らした、と表現しますが抗菌薬投与で治療することもあります。
その場合再発がネックとなるのですが、今回は抗菌薬治療と外科的治療(手術による虫垂切除)の比較をした論文の紹介です。
急性虫垂炎患者530人を、
・抗菌薬治療群(257人)
・虫垂切除術群(273人)
にランダムに振り分けて比較しています。
5年間の調査の結果、
抗菌薬治療群では、
~1年 27.3%(70人) → 手術
1~5年 11.7%(30人) → 手術
となりました。
5年後の虫垂炎の累積再発率は39.1%でしたので、抗菌薬治療を受けた人の内60%はそのまま再発がなかったとのことです。
僕が研修医の頃、外科の先生は
「点滴で散らして手術しない場合、再発の確率は五分五分だよ」
と説明していたのですが5年間での成績は概ねそれくらいかもしれません。
この試験では、抗菌薬の点滴を3日間行い、7日間の経口での抗菌薬投与を行っています。
外科手術の場合には腹腔鏡で1日で済むということを考えると治療期間としては長くなるかもしれません。
当院では1日1回で効果のある抗菌薬の点滴を使用して外来で治療することもあります。
破裂していたり手術のほうが絶対に良い場合もありますが、それぞれの治療に一長一短ありますので主治医とよく相談することが大切です。