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コロナのヒトーヒト感染の予防について|リーレクリニック大手町・内科

日本では緊急事態宣言が解除され、新規感染者数が少ない状況が続いています。

これまでの取り組み、ソーシャルディスタンスやマスク、ゴーグルなどの感染予防にどれだけ効果があったのでしょうか?

これらの検証試験をまとめたシステマティックレビューの紹介です。

大手町の内科クリニックのコラムです。


Physical distancing, face masks, and eye protection to prevent person-to-person transmission of SARS-CoV-2 and COVID-19: a systematic review and meta-analysis

ランセットに掲載されたシステマティックレビューです。

  1. 論文の結論

  2. 距離を取る(ソーシャルディスタンス・フィジカルディスタンス)ことの予防効果

  3. マスクの予防効果

  4. 目の保護(フェイスシールド)の予防効果

の順に説明します。


論文の結論

現在話題のコロナ(SARS-CoV-2)だけでなくSARS,MERSといった風邪以外の以前のコロナウイルス感染症も含めての解析です。

Figure thumbnail gr1

20013の論文から19409が除外されて604本が対象となっています。

不適切なものを除いて44の論文でメタアナリシスを行っています。

結果を先に記載します。

1m以上の社会的距離 一定の効果あり
マスクと目の保護 有効である可能性がある

との事です。

個別に見ていきます。


距離を取る(ソーシャルディスタンス・フィジカルディスタンス)ことの予防効果

フォレストプロットを示します。

Figure thumbnail gr2

1行づつ解析対象となった論文が記載されています。

真ん中のグラフで、RR(relative risk:相対危険度)を表しています。

この横棒が、1を跨ぐと有意差なしとなります。

RRが1より小さいと、介入が(このグラフでは距離を取ること)がコロナ感染のリスクを小さくして、RRが1より大きいとリスクを大きくすると見て下さい。

一番下に全体での結果が記載されています。

1をまたがず小さい数値が出ています。

RR=0.3(0.20-0.44)というのは、相対危険度0.3でその95%信頼区間が0.2から0.44の間ということです。

信頼区間についてはこちらのコラムで説明しています

信頼区間などについて

距離を取ると感染リスクを三分の一くらい、悪くとも半分に減らせそうと考えて下さい。

どれだけ距離を取るとどれだけリスクを抑えられるか、が次のグラフです。

Figure thumbnail gr3

明らかに1mから、絶対リスクが低下しています。

1m以上の距離をとることが有効と言えそうですね。


マスクの予防効果

次に、話題のマスクについてです。

Figure thumbnail gr4

まず、ほとんどの論文がhealth careの場面での仕様を評価しています。

それでも信頼区間の幅が広かったり、RRが0.を超えていたりと効果があまり出ていません。

下の3つのnon health careでの論文は中国での2本がギリギリ有意差あり、ベトナムのものが有意差なしです。

このベトナムの論文、マスクしていた群が9例、マスクなしが154例ってすごいですね。

使用しているマスクはサージカルマスクとN95 が混ざっています。

もちろんnon health careでの論文は全てサージカルマスクです。

これら全てをまとめて解析して、RR0.34(0.26-0.45)で有効な可能性とされています。

明確にこの論文が根拠とは言われていませんが、

同じ週のWHOの発表では

感染流行地域で距離がとれないときのマスクの使用を推奨する

に変わりました。

Figure thumbnail gr5

明らかに医療機関と他の場所でのマスクの予防効果が違うようにみえますし、N95のほうがaOR小さいです。

陰謀論者ではないのですが、色々勘ぐってしまいたくなります。。。

一応マスクは効果ありそう、

特に医療機関でのN95の使用は効果ありと言えそうです。

ちなみに、マスク素材の壁を作ってそれを濾した空気ではマウスのコロナ感染が減った、というのはマスク効果アリの根拠にはなりません。

マスク着用時に吸気の9割はマスクを濾さず周りから入ってきています。

https://toyokeizai.net/articles/-/341569

私たちはマスク着用時の空気の流れを数値流体力学の手法を用いて分析しました。北九州市立大学の白石靖幸教授がコンピューターによるシミュレーション解析を行ったところ、マスクを着けた場合、吸っている空気のうち、マスクを通して吸引している空気は少量、マスクの顔への密着度がよくない場合は約1割で、横の隙間から吸っている空気が大半、約9割に達するという結果が出ました。空気には、なるべく抵抗の少ないところを通るという性質があるからです。

色々推測するためにはこうした細かい実験結果も重要ですが、結局は実証試験(人がマスクを装着してウイルス感染を抑えられたかの検討)が重要なエビデンスとなります。

それらのシステマティックレビューが今回の論文です。


目の保護(フェイスシールド)の予防効果

はこちらです。

Figure thumbnail gr6

もうフォレストプロットは解説なしで読めますよね。

ちょっと追加すると、横線が長い報告は信頼区間の幅が広いものです。

N数が少ないなどが代表的な原因です。

個人的には、目の保護は意外と効果あるんだな、と感じました。

マスクは熱中症のリスクなどデメリットもありますが、

1m以上の距離をとる目を保護するでしたら感染リスクのあるエリアでは、

出来る人はやっておくといいのではないかと思います。

(そもそも介入群、対照群ともに感染者ゼロの報告も多く感染率が低い疾患とも言えますが)

マスクをして体育の授業を行い小学生の命が失われたニュースが出ています。

為政者にはメリットとリスク、過去の事例から学んで、やってきたことを真摯に検証してルールを決めて欲しいです。

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