スタチンの副作用
スタチンの副作用は多くがノーシーボ効果と考えられています。
(副作用などを)有益性が上回る状況であれば服用を続けましょう。
主治医との相談が重要です。
以前、スタチン(LDLコレステロールを下げるために使われる脂質異常症の薬です)の副作用が一時期話題になりました。
そもそもコレステロールを下げても逆に早死にするとか、医者に騙されるな的な記事などでよく出るお薬です。
例えば、
こういった記事です。
今回はスタチンの副作用に関する報告の紹介です。
ASCOT-LLA試験という合併があり高コレステロール血症のある患者さんに二重盲検無作為化比較試験でアトルバスタチンとプラセボ群での比較を行った試験があります。
この論文は、その追跡調査で盲検化している時期と、非盲検化(ASCOT-LLA試験終了後)の時期での副作用報告を調査したものです。
結果的には、よく言われる筋肉関連の副作用に関しては、盲検化の時期ではプラセボ群と有意差なく、非盲検化の時期では有意差が有るというものでした。
考察としては、スタチンによる筋肉関連の副作用はノーシーボ効果によるものでは無いかとのことでした。
*ノーシーボ効果(ノセボ効果):思い込みで有害な効果が出るという影響です。逆プラシーボ効果と言ったりします。
*プラシーボ効果:思い込みで良い効果が出る影響のことです。典型的には、偽薬による治療効果です。
簡単にいいますと、何を飲んでいるかわからない時期は副作用の報告に2群間に差はなく、
スタチンを飲んでいると分かってからは副作用の報告が増えたということです。
ですので、副作用が本当に多いと言うよりはノーシーボ効果を見ているのではないかという考察です。
(*プラシーボ効果か本当の薬理効果か調べるために、医学研究では二重盲検化無作為化比較試験が行われます。)
ちなみにこのASCOT-LLA試験は、早期中止となった試験です。
スタチン投与群での有効性が早期に確認され、これ以上試験を続けることはプラセボ群の患者さんの不利益につながると判断されたためです。
簡単に言うと、スタチンがとても効果的だから試験してないで早くみんなに処方しましょうという事で中止になりました。
日本人でのスタチンの予防効果を示した有名な試験としてMEGA試験というものもあります。
内容はこちらから日本語で確認できます。
日本人という心筋梗塞などの低リスクな人種であってもスタチンは(有意な副作用の増加をもたらさずに)死亡率を抑える治療という結果です。
スタチンはこうした無作為化比較試験で治療効果と副作用の評価を受けて有益性が確認されているお薬です。
もちろんすべての人が飲むべき薬というわけではなく、コレステロールの値や合併症から有益性がリスクを上回ると考えられる方が処方されるべき薬です。
批判は重要ですが、根拠なく目を引く文章を書いて人を混乱させるのは僕は良くないことだと考えています。
特に副作用だけを大きく取り扱って、薬による利益を無視したり、透析中の患者さんと行った特殊な層で効果が出なかったことを根拠にスタチンは害のみで利益なしといった記事をみると、二次的な健康被害が心配になります。
日本動脈硬化学会が、スタチン不耐に対するステートメントを発表していました。
本当に必要な人には適切に継続し、スタチンが使えない人には代替手段を確立するためによいガイドラインが出来ることを期待しています。