痩せ薬としてのGLP1について
糖尿病の治療薬のGLP1は、痩せ薬としてダイエットにも人気があります。
最近は経口のものも出たため注目されています。
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GLP1とは
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GLP1製剤の効果
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GLP1の注意点
の順に記載します。
大手町の内科のクリニックのコラムです。
GLP1とは
GLP1とは、グルカゴン様ペプチド-1です。
と言われても、何の事か分かりませんね。
簡単に言うと、GLP1とは食後に(消化管に入った炭水化物を認識して)小腸から出るホルモンです。
インスリン分泌や食欲抑制効果のあるホルモンです。
痩せホルモンなんて呼ばれたりもします。
これを外から投与することで血糖を下げたり食欲を低下させて痩せたりといった作用を狙ってGLP1製剤が用いられています。
痩せるということで、美容クリニックの間でとても人気があり最近は通販のような感覚で処方されたりしているようです。
GLP1製剤の効果
オゼンピック(セマグルチド)とビクトーザ(リラグルチド)を比較した論文の紹介です。
糖尿病のない、肥満の人(BMI27以上)で高血圧や睡眠時無呼吸症候群などの疾患がある方が対象となっています。
女性が8割です。
ちなみに参加者の平均体重は104kg,平均BMIは37.5です。
日本人からすると驚きのサイズ感ですね。
(一般化可能性を考える上で大切な情報です)
- 週1回セマグルチド2.4mg皮下注投与群(16週間で漸増、126例)
- とそのマッチングプラセボ群
- 1日1回リラグルチド3.0mg皮下注投与群(4週間で漸増、127例)
- とそのマッチングプラセボ群
で68週間後の体重の減少率をみています。
体重変化率は、
- セマグルチド群-15.8%
- リラグルチド群-6.4%
でした。
(群間差:-9.4ポイント、95%信頼区間[CI]:-12.0~-6.8、p<0.001)
GLP1でしっかり痩せられています。
治療を中止した人の割合は
- セマグルチド群が13.5%
- リラグルチド群は27.6%
でした。
GLP1の注意点
セマグルチドのほうが体重減少率が高いのですが、少し注意点があります。
セマグルチド(オゼンピック)の用量です。
用法及び用量通常、成人には、セマグルチド(遺伝子組換え)として週1回0.5mgを維持用量とし、皮下注射する。ただし、週1回0.25mgから開始し、4週間投与した後、週1回0.5mgに増量する。なお、患者の状態に応じて適宜増減するが、週1回0.5mgを4週間以上投与しても効果不十分な場合には、週1回1.0mgまで増量することができる。
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日本では上記のようになっています。
本試験では、オゼンピックを2.4mg/weekで用いられています。
ちなみにビクトーザも日本では最大1.8mgまでです。
体重も薬の用量も、スケールが大きいですね。
また、注射しただけではなく食事と運動のカウンセリングも行われています。
68週で30回なので、2週に一回に近いペースで専門家から指導されるイメージです。
ということで、この論文を読んで
「1年ちょっと注射すれば体重が16%くらい減るんだ!」
というのは誤解です。
楽して痩せられる魔法の薬のように宣伝されていますが、GLP1製剤もSGLT2阻害薬も低血糖や副作用に注意しながら、食事運動療法と併せて取り組むことが痩せるために大切です。
また、そもそもBMI 18.5未満の低体重に分類されるようなインスタグラマーさんなどがGLP1で16%体重落ちるかというと、もちろん非現実的です。
160cm45kgの人が7kg体重落とす計算です。
シンデレラ体重などと喜んでいる場合ではありません、生命の危機です。
少なくともBMI27以上の人が参考にするべき研究です。
また、痩せる薬はGLP1やSGLT2阻害の他にも効果的なものがいくつかあります。
保険で使えるものもあります。
ビクトーザや防風通聖散に毎月数万円払ったからといって、特別に痩せたりはしません。
タチオンやビタミンCを1万円で注射しても、特別に元気になったりもしません。
値段の高いものを選ぶと、なにか特別な効果を期待する心理は分かりますが、内容を確認して理にかなったものを選ぶほうが賢明です。
流行りに乗るだけでなく、既に効果の証明されている色々な方法を組み合わせて取り組みましょう。
- ローファットやケトジェニックでアンダーカロリーにする
- HIITで効率よく運動する
等を行った上でサプリメントや薬も試すのが良いです。