高血圧の診療ガイドライン
高血圧治療ガイドライン2019(JSH2019)が公表されました。
高血圧学会のHPで一部無料で公開されています。
5年ぶりの改定です。
あまりこまめに改定してほとんど変化ないのも困りますし、10年も経つと論文との遅れが目立つので3~5年おきの改定がいいのではないかな、と個人的に思うので嬉しいです。
高血圧の基準値は変わりなく、2014年版(JSH2014)と同じく140/90mmHg以上となっています。
区分が変更になり、分かりづらかった至適血圧という表現が無くなっています。
至適血圧(120/80mmHg未満)が正常血圧(120/80mmHg未満)に名称が変更されました。
正常血圧(120~129/80~84mmHg)が正常高値血圧(120~129/80mmHg未満)と名前が変わり拡張期血圧が厳しくなり、
正常高値血圧(130~139/85~89mmHg)が高値血圧(130~139/80~89mmH)と名前が変わりました。
かなりのマニアでないと興味なさそうな内容です。
重要な変更点をご紹介します。
降圧の目標値です。
これまでもThe lower the better派(血圧は低ければ低いほどよいはず)とJカーブ派(血圧は低すぎると良くない、ちょうどよいところがあるはず)という考えの方がいていろいろ議論されていました。
(とてもざっくりした分け方ですが、研究なさってる先生の気分を害したらすみません)
とくに高齢者の低血圧は転倒に繋がったり、拡張期圧の過降圧が冠動脈(心臓を影響する血管です)の血流を下げることなどいろいろ議論があり目標値を更に下げるのか注目されていました。
今回の改定では、降圧目標値が10mmhg低くなりました。
他に、日本人は食塩の摂取量が多いのでそこを改善するためにみんなで頑張る必要がある、的なことも書かれています。
行政やマスコミ、産業界の協力が必要と、大きなお話です。
外食で塩分が多くなるのは資本主義の外食産業からしたら当然の変化ですが、数十年後には健康のためにルールを作られるようにあるかもしれませんね。
その前に砂糖規制でスターバックスやコカ・コーラとの戦いがありそうな気もします。
また臨床的な惰性、臨床イナーシャという言葉も挙げられています。
高血圧診療における臨床イナーシャは、
「高血圧であるにもかかわらず治療を開始しない、または、ガイドラインで示されている降圧達成目標よりも高いにもかかわらず、治療を強化せず、そのまま様子をみること」
とのことです。
服薬アドヒアランスの低下や適切な生活習慣と並んで治療を妨げるものです。
色々な要因があるが、これを放置することが心血管疾患や腎臓病の発症に悪影響を及ぼしているのでなんとかしましょう、という内容でした。
治療ガイドラインの浸透を推進すること、患者・一般に対して啓蒙活動、教育プログラムを提供することなどが求められているとのことです。
薬飲んだらやめられなくなるから飲みたくない、と放置している方は確かによくいらっしゃいます。
飲んだらやめられないわけではないですし、放って置くと多くの疾患のリスクになることを色々と説明しても届かないこともあります。
薬は飲まない主義だ、といってどこで作られたかもわからないサプリメントを飲んでいる方もいます。
標準治療(エビデンスに基づいた現時点でベストの治療戦略)よりも代替治療(根拠のないもの)を選ぶ方もいます。
人によって考え方や感じ方、価値観が違うので難しい問題ですね。