抗炎症薬により動脈硬化予防
脂質異常症のある患者さんの治療についての研究です。
新しい知見が出てもすぐに臨床に応用できるものばかりではありませんが、医学の進歩に期待しています。
Antiinflammatory Therapy with Canakinumab for Atherosclerotic Disease
脂質低下作用のない、抗炎症薬により脂質異常症のある患者さんの心血管疾患リスクが低減下という論文です。
脂質異常症の患者さんは動脈硬化が進みやすいため、心筋梗塞や狭心症といった心血管疾患リスクが上昇しています。
特にLDLコレステロール(悪玉)が高い方にその影響が大きく、スタチン系薬剤を用いてLDLを低下させる治療が行われています。
しかし、薬剤投与によりLDLが正常範囲内に入っても、元々コレステロールに異常がない方に比べるとまだ心血管疾患リスクが高いことが知られています。
これを”Residucal Risk”と呼びその対応が検討されています。
今回は、脂質異常症がありスタチン投与によりLDLは正常範囲内になったものの炎症反応が高いままの”Residual Inflammation Risk”に注目した試験です。
カナキヌマブというお薬を用いて調査されました。
イラリスという商品名で、抗炎症作用(抗IL-1β抗体)がありクリオピリン関連周期性症候群に適応のある薬です。
結果として、今回の試験では心血管疾患リスクが15%低下、副事項目として肺がんによる死亡率を77%、肺がんの発症率を67%低下したとのことでした。
NEJMに掲載されたインパクトの有る論文ですので、日本語のニュースにもなっています。
カナキヌマブ、P3試験で心血管イベントリスクを15%低下-スイス・ノバルティス ー 医療NEWS
Residual Riskの研究は素晴らしいと思うのですが、今回の結果が臨床で活きるかというととても疑問です。
このイラリスというお薬、薬価が高いんです。
1バイアル(1瓶)150mgで1420162円します。
この試験では3ヶ月に一度の注射だったようですので3ヶ月でおよそ150万円の費用がかかります。
例えばストロングスタチンのリピトール10mgの薬価は98.6円です。
3ヶ月で9000円以下です。
ちょっと現実的ではないお値段な気がします。。。
安価で副作用が少なく、炎症を抑えて動脈硬化予防出来るお薬の開発に繋がると良いですね!